「愛してるぜ」
「‥‥‥言うな」
「愛してる」
「何も言うな!!」
愛してるという言葉がなんだか怖くて、いつもなら嬉しいはずの言葉を跳ね返す。
顔も見ないで、背を向けたまま、跳ね返す。
「クッ‥‥俺がなにかしたかい?」
違う
そうじゃない
ただ、なぜか、怖いのだ
「ぼうや‥‥?」
ふとかけられた声が意外に近くて、ビクリと体が震えた。
長いため息が聞こえて、男らしくしっかりとした腕が伸びてくる。
なぜか動けなくて、されるがままに後ろから強く抱きしめられた。
「言ってくれねぇとわからねぇんだがな」
ぽんぽん、と頭をなでられて急に泣きたくなった。
無性に腹が立つ。
なぜだかわからないが、腹が立つ。
―――だが、その優しさが嬉しくて愛しくもある。
「言わなくても分かってほしいのだ‥‥‥ばか」
体を反転させて、温かい胸に顔を思い切り押しつけた。
「本当に我が儘なぼうやだぜ」
精進する、とも呟いた彼に頭を撫でられていると、涙が溢れてきた。
今は、彼から与えられる愛情に甘えていたい。
もう二度と、この腕を放したくない。
なぜこの言葉が怖いのかを考えると涙が止まらなくなって、彼の胸で声を押し殺して泣いた。